これまで3本の一人芝居を書いている。潤色・演出作品も入れると4本。
『わたしの弔辞』(高校演劇用脚本)
『Noodles』(出演:近藤強)
『永い接吻』(出演:天明留理子)
『ひろさきのあゆみ〜一人芝居版』(作:柴幸男、潤色:畑澤聖悟、一人芝居版構成・演出:工藤千夏)
一人芝居で演じる俳優は、舞台の上で孤独である。本来であれば、出演者総力をあげて虚構を作り上げ、観客と共有するところ、照明や音響のフォローはあっても、孤軍奮闘しなければならない。でも、その舞台に、確かに、そこにいないはずの相手役が見えてくるのだ。しっかりと。不在の存在感。一人芝はそこが難しくて、面白い。
東青・下北地区高等学校演劇合同発表会
2011年9月@青森明の星高等学校 明の星ホール(青森)
『わたしの弔辞』はコンクールに一人しか出演できないという事情を考慮して、女子部員が一人で観客(弔問客)に語るという設定。地区大会で一度だけ上演されて、写真もないので、ほぼ幻の作品。
『ひろさきのあゆみ〜一人芝居版』 出演:音喜多咲子 ※青森公演は音喜多咲子と工藤由佳子出演の2バージョン、東京公演@ザ・スズナリでは工藤由佳子出演 作:柴幸男、潤色:畑澤聖悟、一人芝居版構成・演出:工藤千夏 2013年4月@アトリエ・グリーンパーク(青森)
『ひろさきのあゆみ〜一人芝居版』は、渡辺源四郎商店の「オトナの高校演劇祭」という企画で、多田淳之介が演出する『修学旅行~TJ-REMIX Ver.』(作:畑澤聖悟)と、『河童~はたらく女の人編』(畑澤聖悟本人が高校演劇版をオトナの俳優が演じるために改変)との三本立ての一本。
柴幸男作・演出の『あゆみ』は、基本的に多人数の俳優が役柄を固定しないでいくつもの役を演じるというのがミソ。そこを敢えて、一人で全部やるという逆転の発想。戯曲にフォーカスする上でなかなかいい企画だと思うのだが、おそらく私が演出した作品の中で一番賛否両論が多かったように思う。俳優たちが上手から下手にスクロールで歩かなければ『あゆみ』の良さは出ない、という意見を頂戴した。『あゆみ』という戯曲のすばらしさは多人数で演じるという部分ではないと考えた故の挑戦なのだが。
『Noodles』 出演:近藤強(青年団) 作・演出:工藤千夏 2014年5月@ザ・スズナリ(東京)
『Noodles』は、英語が堪能な俳優・近藤強さんに宛て書きで、英語の話せない日本人と、日本語の話せないアメリカ人の間に立っている主人公が、ずっと通訳をしている一人芝居。ニューヨークが舞台なのに、落語が重要なモチーフ。英語と落語の組み合わせ、なかなかオツである。ちなみに、マンハッタンのチャイナタウンとリトルイタリーのせめぎ合う地区に日本人が蕎麦屋を作ろうとする話。NY留学中に出会った近藤さんとのこのプロジェクト、いつか再開したい。
『永い接吻』
出演:天明留理子(青年団)
作・演出:工藤千夏
2017年6月@ゆうど(東京)
作・演出のこだわりとしては、本人の音声録音による出演をせず、とにかく、その場で全部やりきるということ。「てんらんかい」というユニットを立ち上げた天明留理子さん(青年団)が、長年取り組んでいる講談と二本立てで公演を打つというので、打ち合わせをしているうちに、このひとり芝居にも講談を取り込んでいくことにした。そうしているうちに、「講談」がものすごく重要なモチーフとなった。これも宛て書きである。
とにかくミニマムに作った、俳優の天明留理子が一人行けば(私も行きたいけれど、行くけれど)、どこでもできる、天明留理子神出鬼没ツアーを長くやれたらいいと思っている。とりあえず、100回公演が目標。
写真は「てんらんかい」のとき。目白のゆうどという古民家ギャラリーで、借景芝居のように作った。7月16日、17日の青森公演ではブラックボックスの舞台で行う。ますます孤軍奮闘度が高まるが、観客はどこにでも、どこまででも飛んでいけると信じている。
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