top of page

シンポジウム2023「破稿、もしイタ、演じ続けること。」

                2023年3月11日YouTube配信開始

『破稿・銀河鉄道の夜』
​1996年兵庫県立神戸高校初演
『もしイタ〜もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』
​                 2011年青森県立青森中央高校演劇部初演

    1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災、2001年3月11日に発生した東日本大震災、それぞれを重要なモチーフにしながら、2023年の今なお演じ続けられている高校演劇作品『破稿・銀河鉄道の夜』『もしイタ〜もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』の創り手である谷省吾氏、畑澤聖悟教諭に、作品の成り立ち、初演当時のこと、その後の再演のこと、そして、2023年今、それぞれの作品にどう関わり、上演を続けているかを語って頂きます。

   聞き手は、高校演劇委員会の岡崎賢一郎。久留米大学附設高校演劇部顧問として『→青森』を創作、2021年に実施された日本劇作家協会のイベント「3.11〜震災戯曲で振り返る10年」で『ひたすら、国道6号線。』(作:髙木優希 )のリーディングを演出、映像制作するなど、福岡県の高校生たちと東日本大震災を考えてきました。二つの作品の初演を知らず、関西にも東北にもゆかりのない岡崎が、新たな視点でシンポジウムを進めます。

<登壇

谷省吾(演出家、いるかHotel主宰、ピッコロシアター講師)

畑澤聖悟(青森県立青森中央高校演劇部顧問)

聞き手:岡崎賢一郎(久留米大学附設高校演劇部顧問)

企画:工藤千夏(震災高校演劇アーカイブ運営)

 

主催:一般社団法人日本劇作家協会

企画・製作:一般社団法人日本劇作家協会高校演劇委員会

『破稿銀河鉄道の夜』について

1996年11月、兵庫県立神戸高校が高校演劇コンクール神戸市大会(神戸アートビレッジセンターKAVCホール・兵庫)にて初演。兵庫県大会、近畿大会を経て、1997年、第43回全国高等学校演劇大会(全国大会/橿原文化会館・奈良)出場。

1998年1月、谷省吾・主宰のいるかHotel vol.1の旗揚げ公演として、神戸アートビレッジセンターKAVCシアター)で上演。以後、今なお、全国の高校演劇部が上演を続けている。2023年1月、いるかHotel第22回公演「風に書かれたクロニクル」では、今年『破稿 銀河鉄道の夜』と同じ部室が舞台の『Bitter&Sweet』が30 年の時を超えて初めて同時上演された。

 

上演記録 https://yabrekoginga.web.fc2.com/yabrekodeta.html

 

破稿銀河鉄道の夜オフィシャルサイト https://yabrekoginga.web.fc2.com

【ものがたり】by 谷省吾

秋の放課後。街を見下ろせる高台の高校。三階にある演劇部。誰もいなかった部室に一人の女子高生が走りこんでくる。カナエ、高校三年生。 彼女は息を整えた後、柔軟体操をし、発声をし、本棚から取り出した戯曲を音読し。その姿は楽しげであり、寂しげであり。そこにサキが声をかける。彼女も三年生、演劇部。今日は三者面談の日。二人の会話は受験勉強に向かうがカナエは何故か、うわの空。心配するサキが三者面談に出ていくとカナエは鞄から上演台本を取り出す。想稿 銀河鉄道の夜。読み始めると、同級生のトウコが飛び出してくる。いつものおしゃべり。尽きない演劇部での珠玉の思い出の数々。上演が終わった台本は破るという演劇部の伝統の話。破られずに残っている「想稿 銀河鉄道の夜」の台本の謎。だが戻って来たサキには見えないトウコ。カナエにしか見えないトウコ。今の彼女は台本を開いた時にカナエにだけ見える存在なのだ。ついにカナエは抱きかかえ続けていた「あの日から」のことを語りだす。かけがえのない親友だった二人。ずっと一緒だった二人。トウコは言う。「破るねんよ、この台本!」「嫌や、破いたらもうトウコに会わへんようになるやん!」彼女たちの最後の愛おしい時間。ついに破られ宙を舞う台本。突然迎えに来る銀河鉄道。「トウコ!トウコ!」叫ぶカナエ。しかしもうそこにトウコはいない。夜景を見つめるカナエとサキ。彼女らの瞳には傷が癒えつつある街が映っている。誰もいなくなった部室。♪さあ、行くんだ、その顔を上げて~♪ ラジカセから銀河鉄道999が背中をやさしく押すように。

『もしイタ〜もし高校野球の女子マネージャーが青森のイタコを呼んだら〜』について

2011年9月、第3回東青・下北地区演劇合同発表会(明の星ホール・青森市)にて初演。青森県大会、東北大会を経て、2012年、第58回全国高等学校演劇大会(全国大会/富山県民会館・富山)で最優秀賞、文部科学大臣奨励賞受賞。

2011年9月から足かけ13年で全国の22都府県50市町と韓国・ソウルで107ステージ上演(2023年3月時点)。そのうちの八戸市、気仙沼市、大船渡市、釜石市、久慈市、仙台市、利府町、宮古市、盛岡市、陸前高田市、石巻市、山元町、塩竃市(野々島)、郡山市、いわき市、女川町、熊本市での公演は被災地応援公演として行われた。2014年のフェスティバル/トーキョー14での招聘公演、2015年のフェスティバル・ボムでの韓国ソウル公演、2016年の三重県の高校生とつくるもしイタ公演(青森中央高校演劇部と三重県の高校生が共演@三重県文化会館)、2019年の通算100ステージ記念OBOG公演も行われた。2020年からは新型コロナウイルスのため公演数が激減。

 

上演記録 https://d1929468-0b7f-4437-b0d2-21eea8fa3685.filesusr.com/ugd/9de327_4384b884fa974f49a6291a74ec9bc349.pdf

 

フェスティバル/トーキョー14 『もしイタ」当日パンフレット

https://www.festival-tokyo.jp/14/wp-content/uploads/2014/08/201411_FT_Robot-Mutsu_Moshi-ita_06.pdf

【ものがたり】by 畑澤聖悟

2011年5月。青森市にある某県立高校。その野球部に一人の女子マネージャーが入部します。彼女は1年生の頃、陸上部に入部しており、やり投げでインターハイに出場したほどの選手でしたが怪我のため現役を断念し、しかも陸上部が廃部になったため、2年生のこの時期に野球部に入部したのです。しかし肝心の野球部は部員が8人しかおらず、やる気のかけらもありません。一念発起した新人マネージャーは部員勧誘に乗り出し、ある転校生に目を留めます。彼は被災地の学校からこの春転校してきたばかりで、前の学校では野球部に所属していたというのです。「野球は辞めた」と言いはる彼をなんとか説得した彼女は「今度はちゃんとしたコーチに来て貰おう」と学校に掛け合います。しかしやってきたコーチはなんと、盲目の老婆、イタコでした。「ワの言うことを聞げば絶対甲子園さ行げる」と宣言する老婆。野球部はいったいどうなってしまうのでしょうか?

 

2023年3月8日zoom収録 3月11日午前10時配信開始

登壇者プロフィール

谷 省吾(たに しょうご)

ピッコロ演劇学校第1期卒(現在は講師も務める)いるかHotelを主宰。
演出として、遊気舎プロデュース公演や他劇団やプロデュース公演の演出を数多く手掛け、スペースゼロ演劇賞大賞(99年)演出賞(98、99年)受賞。
役者として、遊気舎、OMSプロデュース公演、Axle、等に数多く出演。

いるかHotel HP http://irukahtl.web.fc2.com

 

畑澤聖悟(はたさわ せいご)

青森県立青森中央高校演劇部顧問。渡辺源四郎商店店主。指導した演劇部(青森中央高校、弘前中央高校)を11度の全国大会に導き、最優秀賞3回、優秀賞6回受賞。春季全国高等学校演劇研究大会には5回出場。中高生向けのワークショップを全国各地で精力的に行っている。

渡辺源四郎商店HP  http://www.nabegen.com
 

岡崎賢一郎(おかざき けんいちろう)

2000年より久留米大学附設高校演劇部顧問。2014年、第60回全国高等学校演劇大会(全国大会/ひたちなか市文化会館・茨城)において『女子高生』で最優秀賞、文部科学大臣奨励賞受賞。他に春季全国高等学校演劇大会に3回出場。この夏、鹿児島県で開催される第69回全国高等学校演劇大会(全国大会/ひたちなか市文化会館・鹿児島)に、九州ブロック代表として『戯王 【gi:oh】』を上演予定。

 

工藤千夏(くどう ちなつ)

劇作家・演出家。うさぎ庵主宰。渡辺源四郎商店ドラマターグ。(一社)日本劇作家協会高校演劇委員会ワーキンググループメンバーとして、「震災高校演劇アーカイブ」を運営。全国の高校演劇コンクールの審査員を務め、高校演劇関連のレポートやコラムをウェブ論座等に多数執筆。コロナ禍の高校演劇について執筆、寄稿した「定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2022年後半」(森達也編著、論創社刊)が2023年4月発売予定。

●舞台写真●
bottom of page