(一社)日本劇作家協会
「高校震災演劇」アーカイブ設立について
2011 年 3 月の東日本大震災以降、高校演劇の世界では、特に福島県、宮城県、岩手県の演劇部員や顧問劇作家たちが「自分たちの現在」をオリジナル創作戯曲に書くという試みの中で、震災や震災後の生活を描いた「震災高校演劇」とも呼べる分野の演劇作品が生まれてきました。しかし、その多くは地区大会でただ一度か、上位コンコールに進んだとしても数度上演されただけで消えていきます。審査員の中には「震災の話はもういい」「演劇コンクールで あって、震災弁論大会でない。もっと高校生らしい明るい芝居を評価したい」というような意見も見られるようになり、「風化」が取り沙汰された時期もありました。また、復興が進んでいるという実感があるかどうかとは別に、2011年当時まだ幼かった現在の高校生が何を感じ、何を考えるかは、直後に高校生だった世代とは明らかに違ってきています。
そのような推移を目の当たりにして、放っておいたらそのまま眠ってしまう高校演劇の震災関連の戯曲を遺したい、演劇という表現を通して震災を考えた活動を記録したい、何より、演劇コンクールとは別の視点で「高校震災演劇」を見つめ直したいという思いがどんどんん強くなりました。そして、このアーカイブを設立しようと考えました。
まず、「高校震災演劇」戯曲リストを、震災演劇連絡センターHP に直結するこの「高校震災演劇アーカイブ」HPに掲載することが出発点でした。関係する演劇部顧問に連絡をとり、記録をまとめていくうちに、戯曲リストだけなく、いつどんな風に上演されたのか公演記録や宣伝美術、どんな風に受け止められたのか取材記事や劇評も掲載したくなりました。戯曲そのものにアクセスできるようにする必要性も感じ、「震災演劇連絡センター」とのリンクをさらに強化し、「戯曲入手情報」掲載もスタートしました。東北に限らず、違う地域の高校生がこのテーマに取り組んでいる例や、阪神淡路大震災をはじめとする様々な地域の取り組みの事例紹介も重要です。そして何より、過去を記録するだけでなく、このHPが「震災高校演劇」がリアルタイムで続いていることを紹介し続ける場であるために、ツイッターとコラムも必要だと気付きました。
手探りで懸命に情報を集めていますが、「震災高校演劇」を創り、上演してきた演劇部員や顧問の思いにはまだまだ追いつきません。何卒、情報提供のご協力をお願い申し上げます。
「震災高校演劇」の世界を知っていただくこと、戯曲を読んでいただくこと、そして、上演やリーディングにつながることが目標です。作品リストには上演許可連絡先(著作権者メールアドレス)がありますので、他地域、特に被災地以外で上演の架け橋になれたら幸甚です。
開設・運営にあたり、ご協力を賜った東北地区高等学校演劇協議会、全国高等学校演劇協議会の先生方をはじめとする高校演劇関係者の皆様に心から御礼申し上げます。
2018年10月1日
(一社)日本劇作家協会 高校演劇委員会ワーキンググループメンバー 工藤千夏
SPECIAL THANKS
(五十音順掲載。敬称は省略させていただきます。)
阿部順 安保健 いしいみちこ 大竹真一 岡田篤 岡部敦 川田正明 後藤一峰 小林俊一 齋藤夏菜子 佐藤茂紀 新谷政徳 中村勉 奈良岡真弓 西田直人 畑澤聖悟 日景聡 松岡一夫 三浦淳 山中基雅
青森県立青森中央高等学校演劇部
学校法人 桜丘高校演劇部
仙台市立仙台高等学校演劇部
千葉県立佐倉東高等学校演劇部
千葉県立成田国際高等学校演劇部
福島県立あさか開成高等学演劇部
福島県立いわき総合高校
福島県立大沼高等学演劇部
福島県立小名浜高等学校演劇部
福島県立相馬農業高等学校飯舘校演劇部
福島県立ふたば未来学園高等学校演劇部
宮城県立名取北高等学校演劇部